念願の犬島へ

岡山市の中心部に位置する「林原美術館」設計は前川國男。
昭和初期に活躍した岡山の実業家が収集した東洋古美術を展示する美術館として1964年に開館。
石や煉瓦等をうまく使ったコンパクトな美術館でした。
その時、ちょうど展示していた「平家物語」にはまってしまい、思わず絵巻の解説を買ってしまいました。もっと、歴史を勉強しなければ・・・。


↑林原美術館。この周りにモダニズム建築がずらり。
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瀬戸内海の島に、直島に続くアートの世界が広がっている島がありました。
「犬島アートプロジェクト「精錬所」」設計は三分一博志。
ずっと、行きたかった場所です。

犬島は現在、人口64人。
1909年に銅製錬所が開業した時には人口3000人を超えていましたが、わずか10年で銅価格の大暴落などの理由により精錬所は閉鎖されました。
たった10年間使った場所が、90年間手つかずの状態だったわけです。

そんな場所に光を当てたのがアーティストの柳幸典さん。（2008.7casabrutus参照）
「瀬戸内海には、毒ガスを作っていた島や、ハンセン病患者が隔離させられていた島など、日本の近代化の矛盾を背負わされていた島がある。都市生活をしていると、廃棄物がどこに行くのかなどめったに考えないですよね。しかし香川県豊島のように、産業廃棄物が大量に不法投棄される島がある。都会で暮らしているより、こうした特異点といえる島からのほうが、社会全体の問題がよく見える。」
柳さんは犬島と出会い、ベネッセコーポレーション福武会長に犬島でのアートプロジェクトを行いたいと提案し、福武会長は精錬所跡の土地を取得しました。

三分一博志さんに設計を依頼したのは、福武会長。
自然エネルギーを利用した空間づくりにおそらく共感したのでしょう。

この美術館は機械空調を使わず、地熱や太陽熱などの自然の力で空調するという、美術館としては特殊な空間です。
施設内は、常に風が通り抜け、精錬所のシンボルでもある煙突は、空気を排出するまさに「煙突効果」の役割を持たせています。

展示している作品は、この美術館の環境に合わせてつくられています。
三島由紀夫をモチーフにした作品は不思議な世界を見せてくれます。

また、美術館で出た汚水を循環するシステムをはじめ、施設内の通路をつくる為に伐採した木をチップにして、通路にまいたり、精錬所の製造過程で出るカラミ煉瓦、犬島御影（石）を積極的に利用していました。
福武さんがよく語る「在るものを活かし、無いものを創る」という言葉にぴったりの施設づくりだと感じました。

今後の、この島のアートプロジェクトの展開が楽しみです。


↑犬島アートプロジェクト「精錬所」。西部警察のロケ地にもなった。